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【実装ログ】ISO 14971 FMEA を Claude AI で作る:ハザード洗い出しを10分・初稿を30分で仕上げる手法【2026年版】

Updated:

TL;DR ISO 14971 における FMEA(故障モードと影響解析)を Claude で作成する実験を行い、ハザード洗い出し10分・FMEA表初稿30分で完成。従来 6〜9時間 → AI活用後 2〜3時間(約60〜70%削減)。プロンプト設計を「役割・背景・手順・アウトプット形式」の4要素で組むのがコツ。網羅性はむしろ向上、品質は最終レビューする実務者の判断で担保。

目次

はじめに:「またFMEAか」問題

医療機器の開発をやっている人なら、一度はこう思ったことがあるはずです。

「またFMEA書かないといけない……」

リスクマネジメントの中核である FMEA(Failure Mode and Effects Analysis:故障モードと影響解析)。ISO 14971:2019 に基づいてきちんと作ろうとすると、ハザードの洗い出しだけで半日、リスク評価の根拠をまとめるのにさらに数日。しかも「ちゃんと書けてるか」の自信が持てない。

そんな悩みを抱えながら、今回は Claude AI で FMEA の初稿を作る実験をしてみました。

結論から言うと、ハザードの洗い出しが10分、FMEA表の初稿が30分で完成しました。完璧ではないけれど、ゼロから自分で書くより圧倒的に速かった。その実験の詳細を全部公開します。

そもそもFMEAって何が大変なのか

FMEA は ISO 14971 におけるリスク分析の中心的な文書です。大変な理由は3つあります。

① ハザードの洗い出しが属人的

経験の浅い担当者が書くと、ハザードの抜けが多い。「電気系は書けたけど、生物学的リスクを忘れてた」みたいなことが起きます。ISO 14971 Annex C には参考リストがありますが、自社製品に当てはめる判断は人間がやるしかない。

② リスクスコアの根拠が曖昧になりがち

発生確率 P と重篤度 S の数字をどう決めるか、会社によって基準がバラバラ。新人が書いた場合「なんで P=3 なの?」と聞かれても答えられない、という状況がよく起きます。

③ 低減措置の記述が薄い

「設計で対策した」で終わってしまい、具体的な低減措置の内容や、それによってリスクがどう変わったかが不明確になりがちです。

実験の設定

項目内容
対象製品非接触体温計(仮想の汎用機器として設定)
使用AIツールClaude Sonnet 4.6
参照規格ISO 14971:2019 / IEC 62366-1:2015
目標FMEAの初稿(ハザード10件以上、各行の記述が審査に耐えられるレベル)

実験前の自分の予想は「ハザードリストくらいは出せるだろうけど、スコアの根拠は無理だろう」でした。結果は半分当たり、半分外れ。詳細は後述します。

プロンプト設計が全て

最初に適当なプロンプトで試したら、案の定ダメでした。

失敗例(最初のプロンプト)

非接触体温計のFMEAを作ってください。ISO 14971に基づいて。

返ってきたのは、ふんわりした箇条書きリストで、表形式でもなく、スコアも根拠もない。使えない

成功例(4要素で再設計)

プロンプトを 「役割・背景・手順・アウトプット形式」 の4要素で設計し直したところ、ISO 14971 Annex C のハザード分類に沿って、P/S 根拠付きの FMEA 表が返ってきました。

# 役割
あなたは ISO 14971:2019 と IEC 62366-1:2015 に精通した
医療機器の品質管理エンジニアです。

# 背景(製品情報)
- 対象製品: 非接触体温計
- 使用環境: 家庭・診療所の体温測定
- ターゲットユーザー: 一般消費者・看護師
- 主要機能: 額面赤外線測定、Bluetooth でスマホ連携

# 手順
1. ISO 14971 Annex C のハザード分類(エネルギー / 生物学的・化学的 /
   操作的 / 情報・ユーザビリティ / 機能的)に沿ってハザードを洗い出す
2. 各ハザードに対して、P (Probability) と S (Severity) を 1〜5 で推定
   その根拠を1〜2文で明示する
3. 低減措置を「設計 / 製造 / 情報提供」の3レイヤーに分けて記述
4. 残留リスクの推定スコアと受容判断(Acceptable / ALARP / Unacceptable)を提示

# アウトプット形式
| # | カテゴリ | ハザード | 危険状態 | 傷害 | P | S | RPN | 根拠 | 低減措置 (設計) | 低減措置 (製造) | 低減措置 (情報) | 残留P | 残留S | 残留RPN | 受容判断 |

15行以上、Annex Cの全カテゴリをカバーしてください。

このプロンプトを送ったら、約2分でFMEA表の初稿が返ってきました。

結果:10分でハザードリスト・30分でFMEA初稿

ハザード件数の内訳

所要時間の内訳

ステップ時間
プロンプト設計(試行錯誤含む)約20分
AIが初稿を生成約2分
内容の確認・修正約10分
合計約32分

自分で同じものを書こうとすると、経験があっても2〜3時間はかかります。

AIが得意だったこと・苦手だったこと

得意だったこと ✅

苦手だったこと ❌

実務での使い方:AIは「たたき台製造機」

[AIにやらせること]
✓ ハザードの初期リスト生成(網羅性の担保)
✓ FMEA表の初稿作成(フォーマット整理)
✓ 一般的な低減措置のアイデア出し

[人間がやること]
✓ 自社製品固有のリスクの追加・修正
✓ P・Sスコアの自社基準との照合・調整
✓ 低減措置の実現可能性確認と文書化
✓ 残留リスクの受容可否判断
✓ 最終レビューと承認

つまり、AIが「優秀なアシスタントの初稿」を作り、薬事担当者が「専門家としての最終判断」をするという分担です。

工数削減の可能性

ステップ従来AI活用後
ハザード洗い出し2〜3時間15分
FMEA初稿作成3〜4時間30〜40分
レビュー・修正1〜2時間1〜2時間(変わらず)
合計6〜9時間2〜3時間
削減率約60〜70%

「品質が下がるのでは」という懸念

「AIを使うと品質が下がるのでは?」という懸念について率直に答えます。

網羅性は下がりません。むしろ上がる可能性があります。

人間がゼロから書くと、自分の経験範囲のハザードしか出てこない。AI は Annex C のカテゴリーに沿って体系的に出してくれるので、「思いつかなかったハザード」が補完されます。

品質を担保するのは AI ではなく、最終レビューをする薬事担当者の判断です。その点は AI 活用前後で変わりません。

FAQ

Q1. ChatGPT でも同じプロンプトで動きますか? A. 動きますが、私の検証では Claude の方が「Annex C 各カテゴリの均等な網羅」が優れていました。ChatGPT は思いついた順に出力する傾向があり、カテゴリの偏りが出やすかったです。

Q2. プロンプトのテンプレートはどこかで配布していますか? A. はい、本記事のプロンプトをカスタマイズ可能な形にした MedAgent JP の Excel テンプレート(¥29,800) に含まれています。詳細は記事末尾の関連リソースを参照ください。

Q3. 残留リスクの受容判断もAIに任せられますか? A. 任せられません。受容判断は製造業者の責任で行うべき判断であり、ALARP 原則の適用や ベネフィット・リスク分析は AI が代替できる領域ではありません。

Q4. ISO 14971:2019 と ISO 14971:2007 の違いは? A. 2019年版では用語の整理(特に Risk → Risk acceptability)と、ベネフィット・リスク分析の要求が明確化されました。プロンプトでは必ず「ISO 14971:2019」を明示してください。古い情報が混入するのを防げます。

関連リソース

続いて読むべき記事

即実践できるテンプレート

🛠 ISO 14971:2019 リスクマネジメントファイル Excelテンプレート【AI活用対応版】¥29,800

本記事で使ったプロンプトと組み合わせて使える、6シート構成のExcelテンプレートです。

note の短縮版

ISO 14971 のFMEAを Claude AI で作ってみたら、ハザード洗い出しが10分で終わった話


※ このレポートは実験的なAI活用の記録です。実際の薬事申請に使用する文書は、必ず専門家のレビューを受けてください


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